「ピー」と「ブー」

まさか家に居続ける事になろうとは。
我が家にはすでに一匹の雑種がいた。家は広かったが、そんなに裕福ではなかった我が家で、計三匹の犬を同時に飼うことになろうとは…。
始めは預かるだけだった。祖父の家で飼う予定の二匹の双子ちゃんは柴犬で、綺麗な黄金色のような色と、どこか狸のような黒っぽい色をしていた。人が良く、断りきれなかった祖父は生まれたばかりの二匹の子犬をもらって帰ってきた。小さい子犬が苦手だという祖父の代わりに、大きくなるまでという約束で、うちで世話をすることになった。
子どもだった私は大喜だった。なんせ可愛い子犬が二匹いっぺんに我が家へやってきたのだから。しかも子犬の時だけという条件だったために、我が家で十分かわいがるだけかわいがった。さて、育てるうえで、短期間だけとはいえ名前が必要だ。しかし愛着がわいて手放すのが嫌になることを恐れ、家族で適当な名前を付けた。黄金色で可愛らしく見える方が「ピー」。狸のようで小太りなのが「ブー」。まるで犬の名前ではないが、私たちはそれでよかった。呼び名の区別さえできれば…。
しかし段々と大きくなってきていたある時。「ウチじゃ無理よ、三匹なんて」「しょうがないだろう」と母と父が喧嘩をしていた。そう、頑固な祖父は父へ一方的に犬を飼うことを押し付けたのです。祖父は自分で飼うつもりなどなかったのです。段々と愛着の湧いていた私にとっては好都合でしたが、家計が苦しかった我が家にとっては、とても厳しいことだったのかもしれません。しかも、すぐ手放すつもりで付けたあの名前もそのままで呼び続けられることになろうとは。
そんな二匹の兄弟はいつも一緒で仲良く暮らしていたが、ブーはそれから約3ヶ月後に亡くなった。農薬を食べたらしく、田んぼで冷たくなって倒れていた。最初からうちの犬になることが分かっていたら、もっとちゃんとした名前を二匹に付けてあげられたのに…。
犬は安易な気持ちで飼ってはいけない。ちゃんと生きているのだから。

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